田中昌人先生の「可逆操作の高次化における階層-段階理論」について、私なりの解釈を添えて、解説をしていこうと思います。
間違えもあるかもしれませんので、参考程度にご覧下さい。
まず、田中先生は、乳児期を前半と後半に分けています。
乳児期前半とは、生まれてから6,7ヶ月ごろとしていますが、月齢はあくまで目安であって、大切なのはこの乳児期前半の赤ちゃんが、どのようにして発達していくかが大切になります。
乳児期前半は、生まれてから正面を捉えられるようになり、向きを変えたり持ち替えたり、見返りが出来るまでの時期を指します。
うまれたばかりの赤ちゃんは、仰向けの状態で外の世界を見て、聞いて、感じ取っているわけです。
自分から移動することのできない赤ちゃんには、大人が抱っこをしたり、支え座りをさせたりして赤ちゃんに働きかけます。
その為、赤ちゃんは『育児』という助けを借りなければ生きていけない生き物なのです。
田中先生は、赤ちゃんは生まれることで3つの自由を手に入れられると考えました。
1つめは、『代謝の自由』の獲得です。
これまでへその緒で育まれてきた命ですが、肺で呼吸することができるようになり、口で栄養を得ることができるようになり、排泄もできるようになるということを『代謝の自由』としています。
2つめは、『感覚の自由』です。
見る、聞く、肌で感じるだけでなく、味覚や嗅覚を感じられるようになるなど、胎児期と比べると感受性が増大します。
3つめは、『活動の自由』です。
眠りと目覚めの生活リズムの獲得や、原始反射が消失していく中で、欲求に基づく随意運動(意図した活動)が行えるようになります。
これらの発達的自由が連関しあって増大していく過程を見ると、各機能の高次化に3つの順序があり、それが緩やかに連関しあい、3つの発達段階を形作っていくと考えました。
乳児期前半は、乳児期後半に移行する前段階とする飛躍的移行期までを『乳児期前半』としており、田中先生はこれを『乳児期前半の発達の階層』あるいは『生後第一の階層』としています。
これから時間をかけて説明をする『可逆操作の高次化における階層段階理論』では、この階層を『回転可逆操作の階層』としています。
いろんな漢字が出てきてイメージができないかもしれませんが、ここまでで把握して欲しい点は、
①生まれたら3つの自由が獲得できること
②色々な側面の成長が影響し合って、発達をしていくということ
③高次化とは、ある成長的出来事が見られるまでの過程であるということ
この3つになります。
これを踏まえたうえで、具体的にどのように赤ちゃんの発達を捉えているのか説明します。
一番イメージがしやすいのは、眠りと目覚めです。
生まれてすぐの赤ちゃんは昼夜のリズムがなく、1時間寝たら1時間くらい目覚めてまた眠るといった繰り返しが見られます。お父さんお母さんが育児の中で一番大変な時期かもしれませんね。
昼夜問わず、赤ちゃんの様子を見ていないといけないので、まとまって眠るのが難しいのです(難しかったです)。
しかし、3ヶ月頃になると、夜に8時間くらいしっかりと眠ってくれるようになります。
寝顔が可愛く見えるのは、まとまって寝てくれるという安堵も含まれているのかもしれません。夜寝てくれるようになると、日中の活動量も増えてきます。
この段階になると赤ちゃん様は夜を手に入れたといっても過言ではありません。夜を手に入れた赤ちゃん様は、次の段階に移行します。
5ヶ月頃になると、朝起きて活動(ごはんなど)して、午前中に眠ります。また起きて活動をして(やっぱりごはん)、お昼寝をします。また起きて活動をしながら段々とまどろみ、夜まとまって眠ってくれるようになるのです。
こうして昼夜のリズムを手に入れていくのです。
まとめると、
①昼夜を問わない無敵フェーズ
②夜を手に入れた赤ちゃん様フェーズ
③夜を確かなものにし、日中を活動する赤ちゃん様フェーズ
の3つの段階を経て、眠りと目覚めが成熟され始めます。
目覚め、が成熟されると活動の増加につながります。この3つの段階を念頭に置いたまま、次は運動面について話を進めます。
赤ちゃんはうまれてからしばらく、仰向けの状態で世界を見ています。この時、赤ちゃんの姿勢は非対称性が強く、
・どちらかの手があがっている
・顔が左右どちらかに向いている
といった状態が見られます。この時期の状態を『
形態的非対称位』といいます。

我が子の似顔絵を知り合いに描いてもらいました。
めちゃくちゃ可愛い。
3ヶ月頃になると、首がすわり始め、顔が正面を向けるようになってきます。その上、左右を見ることが増え、手と手、足と足が対称になってきます。
(これも最高に可愛い)
いままでは原始反射で動いていた、不随意的な運動が多かった赤ちゃん様が、あれを持ちたい、これを触りたいなどの欲求に合わせて動くことが増えてきます。
こうした随意運動が増える反面、原始反射は緩やかに消失していきます。この時期の状態を『機能内連関性をもった形態的対称位』といいます。
随意運動が増えてくると、手と手、足と足という繋がり(横、あるいは左右)から、手と足といった繋がり(縦、あるいは上下)を獲得してきます。
(本当にそっくり。超可愛い)
この時期を『機能間連関性をもった機能的対称位』といい、活動の幅が大きく増えてきます。
今回は仰向けを例に挙げましたが、うつ伏せ、支え座りの状態も、
①形態的非対称位
②機能内連関性をもった形態的対称位
③機能間連関性をもった機能的対称位
といったような3つの順序性を持って発達していきます。
このような、ある状態から順番に何らかの変化を持って、例えば「座る」という活動を獲得していく過程を、『高次化』と考えることが出来るのではないでしょうか。
赤ちゃんは、一度獲得されると特別なこと(病気など)がない限り、発達の質的変化が下がるということはありません。「首がすわったけど、やっぱりやめてすわらんとこ」にはならないのです。
タイトルにある『可逆操作における高次化の階層段階理論』という可逆操作という概念が、階層の違いを示すための鍵となると、田中先生は言っていました。
ここまででおよそ2500文字。
そろそろ飽き始めてしまう文字数なので、今回はここまでです。
だいぶ咀嚼をしたので、ニュアンスが少し違うかもしれませんが致命的ではないと思います。
致命的な間違いがありましたら、やさしくご指摘ください。